営業体制を設計する際、「アポ獲得からクロージングまで全て営業代行に任せる」「全て自社で内製する」という二択で考えがちだが、実際には「アポ獲得は営業代行、クロージング以降は自社」というハイブリッド型も有力な選択肢になる。ここでは3つのパターンを、目安となる人数・組織図イメージも交えながら、コストとマネジメントという2つの観点から整理する。
3パターンの全体像と組織図イメージ
全部代行型
アポ獲得からクロージング、場合によっては契約後のフォローまで、営業プロセス全体を営業代行に委託する。自社側に置く人員は最小限で済む。
自社:窓口担当 1名(進捗確認・情報共有、稼働は週1〜2時間程度が目安)
委託先:SDR(アポ獲得)+クロージング担当 計3〜5名程度が稼働
全部自社型
採用から育成、日々のマネジメントまで含めて、営業組織を完全に内製する。立ち上げ期でも最低限、マネージャー1名+プレイヤー2〜3名の体制からスタートするのが一般的だ。
営業マネージャー 1名
├─ フィールドセールス(クロージング) 2〜3名
└─ SDR(アポ獲得) 2〜3名
合計 5〜7名規模
ハイブリッド型
アポ獲得や一次対応など特定の工程のみ営業代行に任せ、クロージングや既存顧客対応は自社の営業担当者が行う。自社人員は全部自社型より少なく、3〜4名程度で運用するケースが多い。
自社:営業マネージャー 1名(委託先との連携も兼務)
└─ フィールドセールス(クロージング) 2〜3名
委託先:SDR(アポ獲得)チーム
コスト観点での比較
| パターン | コストの特徴 | 目安金額(月額) | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| 全部代行型 | 成果報酬型が中心で、成果が出た分だけ費用が発生しやすい | 固定報酬型なら1名あたり月50万〜70万円程度、成果報酬型ならアポ・商談1件あたり3万〜10万円程度 | 固定費を抑えられる。採用・育成コストがかからない | 案件数が増えるほど、正社員を雇うより割高になる分岐点がある |
| 全部自社型 | 採用費・給与・法定福利費など固定費が中心 | 5〜7名体制で月140万〜320万円程度(給与25万〜40万円/人+法定福利費約15%換算、採用費は別途数十万〜100万円超/人) | 案件数が多い・長期運用ほど1人あたりのコストが下がりやすい | 採用・育成にかかる立ち上がり期間中のコストが先行して発生する |
| ハイブリッド型 | アポ獲得部分は変動費、クロージング以降は固定費という組み合わせ | 自社クロージング要員3〜4名分で月86万〜184万円程度+委託先へのアポ獲得費用(成果報酬なら1件3万〜10万円程度) | 変動しやすい工程だけ変動費化でき、コストの波を抑えやすい | 2つの費用構造を同時に管理するため、全体コストの見通しがやや立てにくい |
ポイント:ハイブリッド型は「アポ獲得の量が読みにくい段階では代行、成約後の関係構築は自社」という形で、工程ごとにコスト構造を使い分けられる点が特徴だ。自社人件費だけを見ると全部自社型より小さくなりやすいが、委託費用を合算した総額で比較することが欠かせない。
マネジメント観点での比較
| パターン | マネジメントの特徴 | 管理工数の目安 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| 全部代行型 | 委託先が業務の進め方を管理するため、自社の管理工数は小さい | 進捗確認・情報共有で週1〜2時間程度 | マネジメント負荷が軽く、少人数でも運用できる | 営業ノウハウが自社に蓄積されにくい。委託先への指示・確認に一定の工数はかかる |
| 全部自社型 | 採用・育成・評価・日々の1on1まで、全て自社でマネジメントする | マネージャー1名がプレイヤー4〜6名を見る体制が目安 | ノウハウが自社に蓄積し、商材理解の深いメンバーを育てられる | マネージャーの育成・確保自体が課題になりやすく、管理工数も大きい |
| ハイブリッド型 | アポ獲得部分は委託先管理、クロージング以降は自社管理と分業する | マネージャー1名が自社メンバー2〜3名+委託先との連携を兼務 | クロージングという重要工程のノウハウは自社に残しつつ、負荷の高い新規開拓は任せられる | 委託先と自社の間の引き継ぎ・情報連携の設計が必要になり、ここが弱いと機会損失につながる |
ポイント:ハイブリッド型を機能させる鍵は、委託先から自社への「引き継ぎの質」にある。アポの温度感や顧客背景がクロージング担当に正確に伝わらないと、せっかく獲得したアポイントの商談化率が下がりかねない。
どのパターンが向いているか
全部代行型が向いている場面
営業組織をゼロから立ち上げる段階や、特定商材の需要を短期間で検証したい場合には、全部代行型で素早く動き出す選択肢が現実的だろう。月間の新規アポ獲得目標が数件〜十数件程度の立ち上げ期は、5〜7名規模の内製組織を用意するより、委託先の3〜5名体制を活用する方が投資対効果を検証しやすい。
全部自社型が向いている場面
商材への深い専門知識が求められる、あるいは長期的な顧客関係の構築が成果を大きく左右する事業では、営業ノウハウを自社に蓄積できる全部自社型に分がある。月間の商談創出数が数十件規模まで安定して見込める段階になると、5〜7名体制でも1人あたりのコスト効率が委託より優位になりやすい。
ハイブリッド型が向いている場面
新規開拓の量を安定的に確保しつつ、既存の重要顧客との関係構築は自社でしっかり担いたいという企業には、ハイブリッド型が現実的な落としどころになりやすい。自社人員を3〜4名程度に抑えながらクロージングのノウハウは蓄積したい、という段階でよく採用される。
移行を見据えた考え方
多くの企業では、いきなり理想の体制にたどり着くのではなく、段階的にパターンを移行していく。立ち上げ初期は全部代行型(自社1名+委託先3〜5名)でスピードを優先し、ノウハウが蓄積されてきた段階でハイブリッド型(自社3〜4名)に移行し、案件数が数十件規模まで拡大した最終段階で全部自社型(自社5〜7名以上)に育てていく。これが一つの典型的な進め方だ。どのパターンも固定ではなく、事業フェーズと案件数に応じて見直す前提で設計しておくことが望ましい。
よくある質問
Q. 3つのパターンのうち、どれが一番コストを抑えられますか A. 案件数や運用期間によって分岐点が変わるため一概には言えない。短期・小規模な検証段階では全部代行型、月間数十件規模まで案件が安定する長期・大規模な運用では全部自社型が有利になりやすい。
Q. 何人くらいからハイブリッド型を検討すべきですか A. 目安として、自社にクロージング担当を2〜3名確保できる見込みが立った段階でハイブリッド型への移行を検討する企業が多い。それ未満の規模では、管理負荷の小さい全部代行型の方が現実的なことが多いとされる。
Q. ハイブリッド型は管理が複雑になりませんか A. 委託先と自社の役割分担・引き継ぎフローを事前に明確に設計しておけば、過度に複雑にはならない。マネージャー1名が自社2〜3名+委託先連携を兼務する体制で運用できるケースが多い。
Q. どの工程を代行に任せ、どこを自社に残すべきか迷います A. 一般的には、負荷が高く定型化しやすいアポ獲得は代行に、商材理解や関係構築が重要なクロージング以降は自社に残す設計が現実的とされるが、商材特性によって最適な切り分けは変わる。
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